[ テーマ: 法律に関する事 ]
2009年8月5日14:41:00
平成16年5月21日「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が,成立し,平成21年5月21日から裁判員制度が始まりました。
そして8月3日に裁判員制度を利用した第1回の裁判が行なわれました。
裁判員制度とは,国民が裁判員として刑事裁判に参加して,被告人が有罪かどうか,有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。
国民が刑事裁判に参加することにより,裁判が身近で分かりやすいものとなり,司法に対する国民の信頼の向上につながることが期待されています。
裁判員に選ばれるまでの流れ
①前年の秋
各地方裁判所ごとに,管内の市町村の選挙管理委員会がくじで選んで作成した名簿に基づき,翌年の裁判員候補者名簿が作成されます。
②前年11月頃
裁判員候補者名簿に記載されたことが通知されます。この段階ではすぐに裁判所へ行く必要はありません。
また,就職禁止事由や客観的な辞退事由に該当しているかどうかなどをたずねる調査票が送付されます。
調査票を返送し,明らかに裁判員になることができない人や,1年を通じて辞退事由が認められる人は,裁判所に呼ばれることはありません。
③事件ごとにに裁判員候補者名簿の中から,くじで裁判員候補者が選ばれます。
④原則、裁判の6週間前まで
くじで選ばれた裁判員候補者に質問票を同封した選任手続期日のお知らせ(呼出状)が送られてきます。
裁判の日数が3日以内の事件(裁判員裁判対象事件の約7割)では,1事件あたり50人程度の裁判員候補者にお知らせが送られる予定になっております。
質問票を返送してもらい,辞退が認められる場合には,呼出しを取り消されますので,裁判所へ行く必要はありません。
⑤裁判の当日裁判員候補者のうち,辞退を希望しなかったり,質問票の記載の内容では辞退が認められなかった方は,選任手続の当日,裁判所へ行くことになります。
裁判長は候補者に対し,不公平な裁判をするおそれの有無や,辞退希望の有無・理由などについて質問をします。
候補者のプライバシーを保護するため,この手続は非公開となっています。
⑥最終的に事件ごとに裁判員6人が選ばれます(必要な場合は補充裁判員も選任します)。
通常であれば午前中に選任手続を終了し,午後から審理が始まります。
もし、社員が裁判員に選ばれたら
裁判所ののホームページでは、全国で1年当たり、裁判員候補者として約300人~600人に1人程度(0.18~0.35%)が裁判所に出向き、約3,500人に1人程度(0.03%)が実際に裁判員または補充裁判員として刑事裁判に参加するという試算が発表されています。
社員が裁判員に選ばれることは当然想定されるべきと言えるでしょう。
労働基準法第7条は公民権行使の保障を定めているため、労働者の権利として、裁判員や裁判員候補者として選ばれた人が、このために休暇を取得することを会社は拒否することができません。
ただし、賃金の取り扱いについては特段の定めはなく、無給でも問題ありません。
会社側の対応としては、特別休暇の項目に裁判員および裁判員候補者として選ばれた場合についての休暇の取り扱いを追加したり、日数や給与の取り扱い、また証明書類の提出を決めておくなど、就業規則を整備しておく必要があるでしょう。
証明書は裁判所からの発行が予定されていますので、就業規則で提出の義務付けを行うのがよろしいのではないでしょうか。
なお、社員が裁判員等になったことを理由として解雇したり、賞与等の査定などで不利益な取り扱いをすることは、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第71条で禁じられています。
裁判員制度に伴う就業規則の変更については当事務所にご相談下さい。
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2009年3月30日17:05:00
労働基準法の一部改正法が成立~ 平成22年4月1日から施行されます~
長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と生活の調和を図ることを目的とする「労働基準法の一部を改正する法律」(平成20年法律第89号)が、平成20年12月12日に公布され、来年、平成22年4月1日から施行されます。
1. 時間外労働の割増賃金率が引き上げられます(中小企業については、当分の間、適用が猶予されます)
1か月に60時間を超える時間外労働を行う場合・・・50%以上
1か月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が、現行の25%から50%に引き上げられます。(注1)
ただし、中小企業については、当分の間、法定割増賃金率の引上げは猶予されます。(注2)
(注1) 割増賃金率の引上げは、時間外労働が対象です。休日労働(35%)
と深夜労働(25%)の割増賃金率は、変更ありません。
(注2) 中小企業の割増賃金率については、施行から3年経過後に改めて検討
することとされています。 (改正法第37条第1項、第138条)
割増賃金の支払に代えた有給の休暇の仕組みが導入されます
事業場で労使協定を締結すれば、1か月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、改正法による引上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を付与することができます。(注1)
労働者がこの有給の休暇を取得した場合でも、現行の25%の割増賃金の支払は必要です。(注2)
(注1) この有給の休暇は、長時間の時間外労働を行ったときから一定の
近接した期間内に、半日単位などまとまった単位で付与することが
考えられますが、詳細は改正法の施行までに、労働政策審議会で
議論の上、厚生労働省令で定められます。
(注2) 労働者が実際に有給の休暇を取得しなかった場合には、50%の
割増賃金の支払が必要です。 (改正法第37条第3項)
2. 割増賃金引上げなどの努力義務が労使に課されます(企業規模にかかわらず、適用されます)
「時間外労働の限度基準」(平成10年労働省告示第154号:限度基準告示)により、1か月に45時間を超えて時間外労働を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定を締結する必要がありますが、新たに、
① 特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する
割増賃金率も定めること
② ①の率は法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること
③ 月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めることが
必要となります。(注1)(注2)
(注1) 労使は、時間外労働協定の内容が限度基準告示に適合したものと
なるようにしなければなりません。(労働基準法第36条第3項)
(注2) 今後、改正法の施行までに、労働政策審議会で議論の上、限度
基準告示が改正される予定です。
3. 年次有給休暇を時間単位で取得できるようになります(企業規模にかかわらず、適用されます)(改正法第39条第4項)
現行では、年次有給休暇は日単位で取得することとされていますが、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。(注1)(注2)
年次有給休暇を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができます。(注3)
(注1) 所定労働日数が少ないパートタイム労働者の方なども、事業場で
労使協定を締結すれば、時間単位で取得できるようになります。
(注2) 1日分の年次有給休暇が何時間分の年次有給休暇に当たるかは、
労働者の所定労働時間をもとに決めることになりますが、詳細は
改正法の施行までに、労働政策審議会で議論の上、厚生労働省
令で定められます。
(注3) 例えば、労働者が日単位で取得することを希望した場合に、
使用者が時間単位に変更することはできません。
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2008年11月11日15:16:00
労働契約を結ぶ場合には・・・
労働者と使用者が合意すれば、労働契約は成立します。事業場に就業規則がある合で、
就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になる場合は、次のような場合です。
●労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を支払うこと」について合意すると、労働
契約が成立します。(第6条)
事業場に就業規則(労働条件などを定めた規則)がある場合には、次のようになり
ます。
● 労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が
① 合理的な内容の就業規則を
② 労働者に周知させていた(労働者がいつでも見られる状態にしていた)場合には、
就業規則で定める労働条件が、労働者の労働条件になります。(第7条本文)
使用者が就業規則を机の中にしまっていて、労働者が見たくても見られない場合
などは、労働者に周知されていませんので、その就業規則は労働者の労働条件には
なりません。
● 労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合
には、その合意していた内容が、労働者の労働条件になります。(第7条ただし書)
事業場に就業規則がある場合でも、労働者のそれぞれの事情に合わせて、労働
条件を柔軟に決めることができます。
● 労働者と使用者が個別に合意していた労働条件が、就業規則を下回っている場合
には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。(第12条)
● 法令や労働協約に反する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません。(第13
条)
労働契約を変える場合には・・・
労働者が働いていく中では、賃金や労働時間などの労働条件が変わることも少なく
ありません。
労働条件の変更をめぐってトラブルにならないように、使用者と労働者で十分に話し合
うことが大切です。
● 労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更できます。(第8条)
【事業場に就業規則がある場合には、労働者の労働条件は、次のように決まります】
●使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更す
ることはできません。(第9条)
● 使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必
要です。(第10条)
① その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
② 労働者に変更後の就業規則を周知させること。
《check !》
就業規則の変更については、裁判で次のような考え方が示されています。
・新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労
働条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なも
のである限り、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、その適用を
拒否することは許されない。(秋北バス事件最高裁判決)
・賃金のような重要な労働条件の変更について、高度の必要性に基づいた合理的な
内容のものである場合には、その効力を生ずる。(大曲市農業協同組合事件最高裁判
決)
・ 定年を延長する代わりに給与が減額された場合において、その合理性の有無の判
断に当たっては、
① 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
② 使用者側の変更の必要性の内容・程度
③ 変更後の就業規則の内容自体の相当性
④ 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
⑤ 労働組合等との交渉の経緯
⑥ 他の労働組合又は他の従業員の対応
⑦ 同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべ
きである。(第四銀行事件最高裁判決)
一部の労働者が被る不利益性の程度や内容を勘案すると、賃金面における変更の合
理性を判断する際に労働組合の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではな
いというべきである。(みちのく銀行事件最高裁判決)
労働契約を終了する場合などには・・・
● 権利濫用と認められる出向命令は、無効となります。(第14条)
出向命令が権利濫用に当たるかどうかは、その出向が必要であるか、対象労働者
の選定が適切であるかなどの事情を総合的に考慮して判断されます。
● 権利濫用と認められる懲戒は、無効となります。(第15条)
出向命令が権利濫用に当たるかどうかは、その出向が必要であるか、対象労働者
の選定が適切であるかなどの事情を総合的に考慮して判断されます。
● 権利濫用と認められる懲戒は、無効となります。(第15条)
懲戒が権利濫用に当たるかどうかは、懲戒の原因となる労働者の行為の性質や態
様などの事情を総合的に考慮して判断されます。
● 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫
用したものとして無効となります。(第16条)
有期労働契約を結ぶ場合には・・・
例えば、1年の契約期間を定めたパートタイム労働者など有期労働契約を結ぶ場合に
は、契約の終了場面における紛争が見られることから、あとでトラブルになったりしない
ように、次のことに気をつけましょう。
● 使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまで、
労働者を解雇することができません。(第17条第1項)
● 使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません。(第17条第2項)
● 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念 上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となります。(第16条)
●また、労働者も労働契約期間を定めた場合には「やむを得ない理由」がないと契約を解除することはできません。
詳しくは 厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)をご覧になるか、当事務所にご相談下さい。
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